洋上風力発電などの浮体係留索として|高耐食ケーブルの開発

海水に曝された場合も腐食を防ぐ、高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎

神鋼鋼線工業では、高耐食かつ高疲労強度の構造用ケーブル「高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎」を開発しました。

海中で20年以上にわたり、メンテナンスフリーで使用に耐えることを想定し、亜鉛めっき鋼線の上に、さらに亜鉛線と分厚いポリエチレン被覆を配しています。これにより万が一ポリエチレンが損傷し海水が入り込んでも、亜鉛線の電気防食作用によって鋼線の腐食を防止することが可能となりました。

洋上風力発電や観測ブイ、浮魚礁の浮体係留索として


高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎」は浮体式洋上風力発電設備の艤装(ぎそう)品として、2025年の2月に日本海事協会の設計承認(APPROVAL of Product Design)を取得いたしました。浮体を係留する方法には、カテナリー係留やトート係留、TLP係留(緊張係留)などがありますが、同製品はあらゆる係留方法で設計の検討が可能です。

また、洋上風力発電に限らず、観測ブイや浮魚礁などあらゆる浮体物の係留索として活用できる可能性がございます。浮体係留索の新規製品や、既存の係留索でお困りの方はぜひ一度神鋼鋼線工業へご相談ください。

浮体係留索の基礎

係留索とは、船舶や浮体(ブイ、浮桟橋、洋上プラントなど)を港湾やブイに固定する際に使用されるロープやワイヤーを指します。なかでも浮体を固定するためのものを浮体係留索と呼び港湾運営に重要な役割を果たしています。

係留索には「強度」「柔軟性」「耐久性」が求められます。波風による荷重や振動、周辺設備との接触を常にうけるため、繰り返しの摩耗や張力の変化に耐えられる性能が求められます。加えて、水分・塩分や紫外線にさらされる環境において、長期間安定して使用できることが重要となります。係留索の劣化や破断は船舶事故や荷役作業の停滞につながり、大きな経済的損失や安全上のリスクをもたらします。

係留索に使用される一般的な材質例

天然繊維ロープ

かつてはマニラ麻などの天然繊維が一般的でした。柔軟性に優れ、取り扱いやすい反面、耐久性や耐候性に乏しく、現在では主流ではありません。

合成繊維ロープ

ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンといった合成繊維が広く使用されています。これらは軽量で扱いやすく、海水にも比較的強いのが特徴です。船舶の係留では、係留索を受け渡しする綱取り作業が必要であるため、作業効率や負担軽減の観点から合成繊維ロープが多く使用されます。特に大型船の係留では、伸縮性のあるナイロンロープが衝撃吸収に優れています。ただし、紫外線や摩耗に弱く、経年劣化に注意が必要です。近年では強度に優れた新素材の開発がさかんであり、従来はワイヤーロープが主流であったLNG船などの大型船舶においても、超高分子ポリエチレンといった合成繊維ロープの使用が進んでいます。

鋼製ワイヤーロープ

重荷重に耐えるため、鋼線を撚り合わせたワイヤーロープも多く使われます。引張強度に優れ、大型船舶や特殊用途で欠かせない存在です。鋼製チェーンと比較すると、軽量で強度が発揮できること、弾力性があり衝撃吸収性があることがメリットとして挙げられます。近年では防食処理を施したものや、亜鉛メッキを施したタイプも普及していますが、塩分を含んだ海水中で使用されるため、腐食が最大の課題として残っています。

鋼製チェーン

強度と耐久性に優れることから、船舶や浮体の係留に従来より用いられてきた素材です。重量が大きくなるため、定置する設備の係留、特にカテナリー係留のような自重で浮体を安定させる係留方法で使用されます。一方で、船舶の係留では作業負担の大きさから、より軽量な素材を使用する動きがみられます。ワイヤーロープと同様、腐食が課題となります。

係留方式の種類

係留システムは、係留索やアンカーの素材・取り付け方で複数の種類があります。設計者は、設置場所の水深や海底地盤の状態といった環境要因や、コスト、安定性、浮体式基礎への影響といった複数の要因を考慮して、適切な係留方式を選定する必要があります。

※「高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎」はどの係留方式にも対応が可能です。

カテナリー係留方式

カテナリー係留方式は、海底に敷設されたチェーンやケーブルが自重でたるみ、懸垂線(カテナリー曲線)を形成する方式です。浮体が風や波によって移動すると、海底に接地していた係留索が引き上げられることで、その自重が水平方向の復元力として作用します。  

水深50〜200 m程度の海域で使用されます。浅すぎると係留索の重量が足りず、十分な復元力が得られません。また、深い海域の場合、係留索の重量が大きくなり、浮体の有効浮力の確保に支障をきたします。さらに、海底での占有面積が広くなるため、漁業や船舶航行への影響が懸念される場合があります 。  

TLP方式

浮体から生じる上向きの浮力と、垂直に張られた係留索による下向きの張力が釣り合うことで、浮体を強制的に海面下に引き込む方式です。  

この方式は浮体の上下動や揺れを抑制するため、発電効率を高く維持できるという大きな利点があります 。また、係留索がほぼ垂直に設置されるため、海底の占有面積を他の方式よりも抑えることができ、海域利用の制約や海底生物などに与える影響が最小限となります 。しかし、係留索に常に高い張力がかかるため、アンカーの大型化等で係留システム自体に費用がかさみ、設置難易度も高いという課題があります 。また、万が一係留索が破断した場合に浮体が転倒するリスクも指摘されており、高い信頼性の確保が不可欠です。  

トート係留およびセミトート係留方式

トート係留は、軽量な合成繊維ロープなどを使い、緊張させた係留索を斜めに取り付けて、張力によって復元力を生み出す方式です。係留索は海底に接地しないため、占有面積をカテナリー方式よりも大幅に小さくできます。張力により浮体の動揺変位を吸収する構造であるため、水深が深いほど有効ですが、水深が200 m以浅と比較的浅い場合は十分な張力を得られません。

セミトート係留は、カテナリーとトートのハイブリッド型で、係留索としてチェーンと合成繊維ロープを組み合わせることで、海底に接地する索の長さを最小限に抑えたものです。  

これらの方式では、軽量な係留索の使用により、運搬や施工が容易になります 。また、浮体の動揺を索の弾性で吸収できるため、浮体への負担を軽減する効果があります 。一方、この方式は比較的新しい技術であり、実績が少ないことから技術的な課題が残されています。伸び率の高い繊維索を用いると耐久性や施工中の損傷部位の強度に不安が残る点や、繊維索の伸びや疲労特性を正確に評価する必要があるといった点が挙げられます。

浮体式洋上風力発電の保持

浮体係留索が用いられるものとして、「浮体式洋上風力発電」が挙げられます。

洋上風力発電の中でも「浮体式」は、海底に固定できない深海域での発電を可能にします。しかし、浮体構造物は波・風・潮流の影響を常に受けるため、係留システムによって安定させる必要があります。

係留は「浮体を所定の位置に保持する」役割を担い、その成否が発電設備の安全性や発電効率に直結します。係留システムは一般に以下の要素から構成されます。

  • 係留索:浮体とアンカーをつなぐロープまたはワイヤー
  • アンカー:海底に固定し係留索を保持する装置
  • 補助要素:ブイ、シンカー(おもり)など、張力調整や動揺緩和のための部材

係留索における腐食課題

係留索に広く使われている鋼製ワイヤーロープは、高い引張強度を持つ一方で腐食に弱い欠点があります。特に海上や港湾といった環境では、常に海水や塩分を含んだ潮風にさらされるため、表面から錆が進行しやすくなります。

さらに厄介なのは、腐食が内部から進行するケースです。外見は一見健全に見えても、内部の鋼線が徐々に侵食されて強度が低下している場合があり、破断の危険を察知することが難しくなります。結果として、交換時期を見誤り、予期せぬ事故やトラブルを招くリスクが高まります。耐食性の高い素材の選定には、係留索に求められる高い引張強度や大幅なコスト増といった大きな課題があります。

こうした腐食課題を踏まえ、大型橋梁や建築物で多数の採用実績をもつセミパラレルワイヤケーブル(SPWC)を、海洋環境でご使用いただくために開発したのが高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎です。

浮体係留索の開発は神鋼鋼線工業へご相談ください

今回設計承認を取得した洋上風力発電以外にも、観測ブイや浮魚礁などあらゆる浮体物の係留索として高耐食型セミパラレルワイヤケーブルSPWC®︎が展開できる可能性がございます。浮体係留索の新規製品や、既存の係留索でお困りの方はぜひ一度神鋼鋼線工業へご相談ください。