壁における耐震課題と解決事例15選(工場・体育館ほか)
目次
会社の大切な資産であり、日本の産業や多くの従業員とその家族の生活を支える工場。普段はコミュニケーションの場であり、災害時には避難所としても活用される体育館。
地震が起きた時も大きな役割が期待されているこれらの建物を地震で破壊されないために、壁の耐震補強の重要性は増してきています。大事な建物を守るためにどうすればいいのか、詳しく解説していきます。
工場や体育館などの「壁」の耐震方法
一般的に、壁の耐震方法としては以下の2点が考えられます。
1.耐力壁材の導入
2.ブレース(筋交い)の導入
1. 耐力壁材の導入
耐力壁は耐震壁とも言われる、地震力を負担する壁のことです。ドアや大きな窓のある壁は「雑壁または間仕切り壁」と呼ばれ、耐震強度に算入できないとされます。耐力壁と呼べるのは窓などの開口が無い、または小さい壁のことです。マンションの部屋と部屋の間の壁などがこれに当たります。パーテーションなど、壁内に鉄筋が入らない壁は窓が無くても耐力壁になりません。目安として柱と梁に囲まれた壁面にある開口が4割以下であれば、耐力壁と見なされます。
設計の段階で計画的に入れられるのが最良ですが、耐力壁をあと施工で追加すると採光や動線が悪くなることが考えられます。また、耐力壁は「柱と梁に囲まれた、鉄骨などで補強された壁」という定義があります。工場や体育館など柱のない場所に耐力壁を作るのは、柱が少ないためその性質上難しいです。
2. ブレース(筋交い)の導入
既設建物の耐震補強で使われている工法に、ブレースの増設があります。ブレースとは地震に抵抗するために壁面に入れる筋交いのことで、形状からX型、K型、V型などがあります。
普段は柱と梁で、重力による垂直荷重を引き受けていますが、地震や台風などの災害時には横からも荷重が掛かることになります。柱と梁でできた四角形の面は、横から荷重がかかると平行四辺形に変形して潰れてしまうという弱点があります。ここに鉄骨ブレースを入れて三角形を複数個作ることで、変形を起きにくくします。
壁の耐震に適した耐震ケーブルブレース
ここで、壁の耐震補強に活用できる「耐震ケーブルブレース」をご紹介します。
✔️ 壁面に設備や配管がある場合、基本的に移動させる必要無し
✔️ 既存ブレースがあっても基本的に取り付け可能
✔️ 施工のための準備も最小限
壁周りの設備の移動不要
耐震ケーブルブレースは柔軟性に富み、狭いスペースを通して設置することができます。作業員が一人しか入れないような空間にケーブルブレースを搬入し、片側の端末金具を下にいる作業員に向けて下ろして設置する、といった施工も可能です。
足場の設置も最小限で済み、既存設備や配管の移動が基本的に不要です。
(※ 場合によりますので、詳しくはご相談ください)
壁面への設備を避けての設置例
さらに、端末金具を入れても直径約2m以内のリング状にまとめられます。階段やエレベーターを使ってコンパクトに搬入することができるため、「長尺の鋼材が現場に搬入できるのか」といった事前の確認のための調査手間や、実際に搬入する人員の削減ができます。
壁を開孔しての水平ブレース設置
間柱を開孔しての軸ブレース設置
狭小空間での軸ブレース設置
座屈によるはらみ出し、耐力低下が生じない
地震の時はブレースに引張力だけではなく圧縮力も強く掛かります。細くて長い鉄骨は圧縮力を受けると鋼材がつぶれてはらみ出してしまい、壁を破壊する恐れがあります。実際に2016年の熊本地震では、このはらみ出し(座屈)による建物の損傷・崩壊が多発しました。
ケーブルブレースを構成するより線は引張力のみに抵抗し、圧縮力を受けた場合、柔軟に緩んで受け流します。このため座屈による耐力低下やはらみ出しが起こらず、建物を守ることができます。
低コスト・スピーディー
現場溶接や重機が不要で足場も最小限で済むため、工期を大幅に短くすることができます。また、複数グリッドに跨る屋根向けで建設技術審査証明(BCJ-審査証明-198)を取得しており、品質の観点からも安心してお使いいただけます。
壁における耐震課題と耐震ケーブルブレースによる解決事例15選
壁を耐震補強する場合、建築構造や設備、スペースの問題などさまざまな検討事項が考えられます。以下に、壁における耐震課題と、耐震ケーブルブレースによる解決事例をご紹介します。
建築構造
補強対象が鉄骨造の場合、問題なく使用いただけます。建物の許容水平変位が大きいため、高強度で伸びが大きいケーブルが、十分に耐震補強効果を発揮します。
周辺設備・スペース
課題3:高価な設備が多く、傷付けたくない
課題4:居ながら施工を行いたい
ブレースの配置を検討する際や取付ける際、また、施工のために足場を組む際、そのスペースに設備がある場合は移設をする必要があります。高価な設備を傷つけずに移設するためには、専門の業者へ依頼が必要です。このため移設費用が追加で発生します。また、施工中に設備を稼働できない場合、工程や生産性への影響も無視できません。
耐震ケーブルブレースは径が細く柔軟性に優れているため、狭小空間での配置も得意としています。高価な設備や配管を避けながら、傷付けずに取り付けられます。
同じ理由で、設備の移動や足場の設置が少なくて済み、居ながら施工や稼働停止期間を最小限とすることも可能です。
課題6:外部にスペースが無く、建物内部で簡易に補強したい。
隣接する建物との十分なスペースがない場合など、建物内部から補強する方法が取られます。この場合、階段やエレベーターで搬入しなければならなかったり、設置スペースが狭まかったりするケースが考えられます。
耐震ケーブルブレースであれば、作業員が一人しか入れないような狭小空間でも搬入が可能です。鉄骨ブレースが到底入れないような空間にも柔軟に対応します。
環境
高強度で軽量なケーブルは、人力または簡易な機材(ベビーホイスト等)での運搬、楊重が可能です。
ボルト接合(火無し工法)を推奨しています。もちろん、現場溶接を選択することも可能です。
ブレース中央(交点)の接続が無く、足場は両端部のみとなるため、足場量を一般的なブレース材を使用した場合のの約2/3に低減出来ます。
課題11:ブレースの長さが6mを超える
一般的なブレース材の市中品が約6mに対し、ケーブルは20~30mのコイル状での運搬が可能です。端末金具を含め直径2m以下で、コンパクトな搬入を実現します。
ケーブルはピン1本で定着しており、手締め分の張力を緩めれば、簡単に外すことが出来ます。
工期
人力で運搬・取り付け可能で、配管が入り組んだ環境や狭小空間の施工も柔軟に対応が可能なため、施工前の事前準備が最低限となり、取り付け作業自体の工数も大幅に削減可能です。一般的なブレース材と比較すると約6割の削減となります。
ブレース本数
耐震ケーブルブレースはブレース材の必要本数が多いほど、一般的なブレース材と比較した際のコストメリットがでます。施工費を抑え、施工期間を一般的なブレース材の約6割にまで削減できます。 また、設置本数が1〜2本程度の少ない場合においても狭小空間や設備干渉がある場での施工では優位性を発揮します。ブレース設置のための準備や、別途工事の手間を削減でき、トータルのコストを抑えます。
施工後の懸念
ケーブルは引張のみに抵抗します。圧縮側は緩むだけであるため、座屈による耐力低下やはらみ出しが生じません。
壁の補強事例
1)関西地区
大手電機メーカーの工場
・間柱貫通
・設備移設無し
・無火気
2)関東地区
私立高校の体育館
・足場低減
・無火気
3) 東北地区
大手鋼材メーカーの工場
・足場低減
※ その他の実績については、実績表も併せてご参照ください。
導入を検討されている設計者様へ
鉄骨設計は建物の骨格だけに失敗が許されないので、新工法は設計・施工に不安な点もあるかと思います。耐震ケーブルブレースは販売開始から10年以上が経過し、導入実績は200件以上と年々増加しております。初めて施工される時は、納入時または取付時など、ご希望の日時に弊社より指導員を派遣して、取り扱い説明をいたします。
設計上のご不明点は、ぜひお問い合せフォームからお聞かせください。関連資料もダウンロードできますので、検討のお役に立てたらと思います。
施工を希望されている施主様へ
弊社では信頼できる施工会社様をご紹介しておりますので、お気軽にお問い合せください。尚、お付き合いのある施工会社様での施工も可能です。