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耐震ケーブルブレース コラム Column

【法人向け】耐震工事の費用相場と施工ポイント(工場・倉庫・体育館ほか)

狭小空間 設備の干渉 短工期
制限のある条件下での耐震補強に。
軽くて柔軟、一般的なブレースよりも強い
耐震ケーブルブレース

2011年に起こった東日本大震災では、中小企業の多くが設備や人材を失ったことで廃業に追い込まれました。また、被災の影響が小さかった企業でも、復旧の遅れによって製品やサービスの供給ができず、事業の縮小や顧客離れが起こっています。このような緊急時の備えであるBCP(事業継続計画)が、企業や病院、工場など、職種を問わず求められています。

地震に対しては特に、1981年6月に改正された『新耐震基準』以前に建てられた建物の耐震性が低く、多数の利用者がいる建物には耐震性を確認する『耐震診断』を行うことが義務付けられています。耐震性が不足している場合には、耐震工事を行う必要がありますが、その際に本コラムで紹介する耐震工事の費用相場や注意点などを事前に把握することが重要です。

コラムの最後に準備工事やかわし工事を減らせる工法を紹介していますので、耐震工事を検討している方はぜひ最後までお読み下さい。

法人向け|耐震工事の方法と費用相場

まずは代表的な耐震工事によって発生する費用の相場をそれぞれ見ていきます。

耐震診断と補強工事の費用相場

耐震診断

耐震診断の費用は建物の造りや延床面積によって異なります。

以下に、建物の造りや延床面積の違いによる耐震診断の、1平方メートル当たりの費用の目安を示します。これらは現地調査の費用も含めた料金です。

建物の造り 費用
延床面積:1,000~3,000㎡ 延床面積:1,000㎡以下
RC造(鉄筋コンクリート造) 約1,000~2,500円/㎡ 約2,000円/㎡以上
S造(鉄骨造) 約1,000~3,000円/㎡ 約2,500円/㎡以上

一般的にRC造よりもS造の建物の方が、延床面積が小さくなるほど面積当たりの費用は高額になる傾向があります。ただし、上記の金額は竣工時の一般図や構造図が存在しており、建物が検査済みであることが証明できる場合の費用です。これらの図面が無い場合は別途図面を復元する費用が発生し、上記の金額を上回る場合があるため、注意が必要です

耐震補強工事

次に代表的な耐震補強工事における、1平方メートル当たりの費用の目安を示します。

耐震補強工事 費用
鉄骨ブレース補強 約10万~30万円/㎡
RC壁増設 約5万~20万円/㎡
外付鉄骨水平トラス 約15万~35万円/㎡

これらは、過去に実際の高校・中学校の校舎や体育館などといった、大型の法人施設に行われた耐震補強工事の費用を示しています。建物に必要な耐震補強は、建物のバランスや築年数、建物自体の強度や粘り強さによって異なるため、費用の幅が大きくなっています。

設計費

耐震補強工事の設計費は、工事費の約5~10%です。

耐震工事の方法

耐震工事の方法には大きく分けて、壁を補強する「壁補強」と、屋根を補強する「屋根補強」に分かれています。どちらも建物の構造によって採用できる方法に制限があるため、1つの建物に対して複数の方法を組み合わせて対策する場合もあります。

壁補強

以下に、主な壁補強における補強の対象部位や工事する場所、それぞれの特徴を示します。

対策方法 対象 耐震工事部 特徴
鉄骨ブレース
(開口部)
柱間の開口部 建物の開口部に対して斜めに鉄骨を設置することで、開口部のせん断強さを向上させる。開口部からの採光を残したい場合に用いる。
RC壁の増設 柱間の壁や開口部 既存壁や開口部をRC壁とすることで、壁の耐力と剛性を向上させる。鉄骨ブレースよりも安価だが、採光できなくなることや、壁が重くなるため高層階には使用しづらいなどのデメリットがある。
柱の補強 柱に炭素繊維や鋼板を巻きつけることで柱の強度を向上させる。せん断破壊型の柱を、靭性の高い曲げ破壊型の柱に移行させる。
構造スリット 柱とたれ壁、腰壁の間 柱とたれ壁、腰壁の間に隙間を設けることで、地震発生時に柱に力が集中して破壊されることを防ぐ。他の補強方法と組み合わせて行うことが一般的。
鉄骨水平トラス 軸組み 軒の外側 軒位置に建物に枷をはめるように鉄骨製の水平トラスで囲むことで、建物全体の剛性を向上させる。屋根が重く、壁に対して面外方向のゆれが問題となる建物に適用される。

屋根補強

以下に、主な屋根補強における補強の対象部位や工事する場所、それぞれの特徴を示します。

対策方法 対象 耐震工事部 特徴
鉄骨ブレース 屋根 屋根の骨組み 屋根の水平方向の骨組みに対して対角線上に鉄骨を設置することで、地震による横方向の強度を向上させる。
屋根の取替 屋根 屋根 プレキャストコンクリート製や、吊り天井式の屋根などの、落下の危険がある屋根を撤去し、新たに鉄骨式の屋根に架け替える方法。
接合部補強 梁の支持点 柱と梁の接合部 鉄骨ブレースの追加などにより梁の支持点にかかる荷重が増えるため、梁と柱の接合部を補強する方法。柱と梁に対して斜め方向のリブなどを追加する。

耐震補強を検討すべきケース

耐震補強を検討すべき建物についてご紹介します。

1981年以前に建設されている

現在の耐震設計基準は1981(昭和56)年6月1日に改定されており、改定以前に建てられた建物は耐震性の不十分な恐れが高くなります。現在の耐震設計基準を「新耐震基準」、改定前の基準を「旧耐震基準」と呼びます。

新耐震基準と旧耐震基準の違いは、新耐震基準が震度6~7程度の大規模な地震でも建物が倒壊しないように基準を設けているのに対して、旧耐震基準は震度5までの中規模な地震で建物が倒壊しないように基準を設けている点です。旧耐震基準で建てられた建物は耐震性の低い恐れが高いだけでなく、建築から40年以上経過しており、老朽化による劣化・損傷なども考えられるため、早急に耐震補強工事を施す必要があります。

過去の地震によるダメージを受けている

日本では1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、地震の頻発期に入ったといわれており、過去30年間に震度6以上の地震が20回以上発生しています。

建物は、外観上損傷がない場合でも、過去の地震により内部に劣化やき裂といった損傷が発生している場合があります。例え耐震性の高い鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物であっても、大規模な地震によってダメージを受けている場合には、耐震診断を受けて建物の耐震性を点検する必要があります。地震により外観に損傷が現れている建物は当然ですが、耐震診断によって建物内部に異常が見つかった場合には耐震補強工事が必要です。

1階部分の壁が少ない

店舗や駐車場などの大きなオープンスペースを1階部に持つ構造の建物では、上層階に比べて1階の水平方向の剛性や強度が低くなる傾向があり、このような強度の弱い1階は地震が発生した際に破壊が集中しやすくなります。このように脆弱性を持つ構造のことを「ソフトストーリー」といいます。

日本においてソフトストーリー対策の歴史は新しく、1995年に発生した阪神・淡路大震災を契機として、耐震基準や建築基準法の改正によって対策が進められています。ソフトストーリーは新耐震基準の建物であっても問題となっており、実際に阪神・淡路大震災の際には新耐震基準のソフトストーリーを持つ建物が倒壊する事故が起こっています。最新の耐震基準では、ソフトストーリーが確認された場合には、対策や補強のための耐震補強工事が必要です。

狭小空間 設備の干渉 短工期
制限のある条件下での耐震補強に。
軽くて柔軟、一般的なブレースよりも強い
耐震ケーブルブレース

耐震性の確認方法(耐震診断)

建物の耐震性は、新耐震基準を用いて耐震性の有無を確認する「耐震診断」によって確認します。耐震診断には第一次から第三次までありますが、耐震診断をする目的によって取るべき診断方法が異なります。本章に記載する耐震診断の内容を把握し、目的に沿った診断方法を選択しましょう。

耐震診断の流れ

耐震診断は、事前に耐震診断の準備段階である「予備調査」、実際の現地を確認する「現地調査」、建物の耐震性を具体的かつ詳細に評価する「詳細診断」に分けられます。その中でも詳細診断には診断レベルの違いによって第一次から第三次に分類されます。

予備調査では建築物の概要や設計図書の有無、建物使用履歴などを確認し、診断に必要な情報や資料を収集して、診断計画や方針を立てます。設計図書が無い場合には図面の作製が必要です。次に現地調査を行い、その結果から詳細診断によって耐震性を評価します。どの様な調査を行うかは、診断レベルに応じて診断者が設定します。耐震診断を行った後は、必要に応じて耐震補強案や工事費の概算を算出します。

耐震診断の内容

予備調査

予備調査はいわば耐震診断における前準備です。予備調査では建物の概要(延床面積、階高、壁式など)や使用履歴、増改築歴、経年劣化、設計図書の有無などを確認し、必要な耐震診断のレベルを判断します。

現地調査

現地調査では、目視による調査や設計図書の内容確認、建物修繕履歴などを確認します。現地調査では、詳細診断のレベルによって確認する内容が異なります。診断レベルに応じて必要な基礎・地盤、劣化状況、部材寸法や配筋の状況、コンクリート強度試験、中性化試験などを行います。

詳細診断:第一次診断

第一次診断は、各階の柱と壁の断面積、その階が支えている建物重量から耐震性能を計算する簡便な耐震診断です。設計図書が残っていれば現地調査を行わずに設計図から計算のみで耐震性を調べられる場合もありますが、第一次診断の結果からは正しい補強設計を行えないため、補強設計を行う際には別途第二次診断が必要です。

詳細診断:第二次診断

第二次診断は各階の柱と壁のコンクリート鉄筋の種別、寸法に対して、その階が支える建物重量を比較計算する診断方法です。現地調査では、各階から抜き取ったコンクリートコアを用いた圧縮強度の測定や、建物の劣化状態(ひび割れ、漏水、鉄筋さびなど)などを調査します。第一次診断に比べ信頼性ははるかに高く、第二次診断結果を用いた耐震補強設計も可能です。旧建築基準法で設計されている建物は第二次診断の実施が推奨されています。

詳細診断:第三次診断

第三次診断は柱と壁に加えて梁を考慮し、建物の保有水平耐力を計算する診断方法です。柱や壁よりも、梁の破壊や壁の回転による建物の崩壊が想定される建築物の耐震性能を簡略的に評価するための方法です。ただし、解析モデルの良否によって計算結果が大きく異なるため、難易度の高い方法です。

【建物種別】耐震施工時の注意点

従来の耐震工事を施工するには工事自体の検討以外にも、周辺環境や事業に対して発生する影響を把握しておく必要があります。本章では建物の種類によって注意しておく点を紹介します。

工場

生産活動の低下

工場の屋根に耐震補強工事をする際には大掛かりな足場が必要となるため、場合によっては工事に合わせて生産ラインを止める必要があります。従って施工計画に合わせた受注や、生産スケジュールの調整が必要です。

設備や人の移動が必要

耐震補強工事の施工時には、足場の架設や設備配管・配線の切り替えなどが必要となるため、既存の設備や人員の配置の移動が必要な場合があります。

施工条件による安全の徹底

耐震補強工事は、振動、騒音、粉塵の発生など、工場の作業者に対して安全へのリスクが生じる恐れがあります。また、工事方法によっては溶接を行う場合もあるため、事前に関係者と情報交換をし、工事における十分な安全への対策が必要です。

体育館

利用者への安全対策や周知

体育館に耐震工事を行う場合には、利用者にその旨を周知し、安全性を十分に確保する必要があります。例えば工事の作業場への立ち入りの禁止や、安全な通路や避難路を周知する必要があります。

利用制限

耐震工事中は、体育館の一部または全体が一時的に使用できなくなり、地域の活動やイベントに影響を与える恐れがあります。事前の工事計画では、利用者や関係者とコミュニケーションを密にし、スケジュール調整を行うことが求められます。

構造変更による利用者への影響

耐震工事によって体育館の外観や建物の構造が変化するため、利用者への影響を検討する必要があります。例えば壁面にRC壁を増設する場合には十分な採光が取れなくなることや、ブレースの追加により利用できるスペースが制限されてしまうことなどが考えられます。

景観重要建造物

建物外観の変更

耐震工事に伴い、建物の外部に補強材料や構造補強を追加する場合がありますが、これは景観重要建造物の外観に影響を与え、歴史的価値や景観を損なう可能性があります。従って、外観の選定には十分に気を付ける必要があります。

景観法の遵守

景観重要建造物に対して耐震補強工事を行う場合、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替えまたは色彩などが変化する場合には、景観行政団体の長の許可が必要となります(景観法第22条)。

低コスト・スピーディーな耐震ケーブルブレース

さまざまな耐震工事の特徴や費用などを紹介してきましたが、一般的なブレースとほぼ同様の設計手法で使用でき、全体コストの低減と工期短縮が可能となる「耐震ケーブルブレース」について紹介します。

全体コストの低減(最大約41%減)

耐震ケーブルブレースを用いることで、一般的なブレースに比べて全体コストを最大約41%減らすことが可能です。

耐震ケーブルブレースは、従来、鉄骨や鋼管であったブレースを、高強度のPC鋼より線のケーブルに置き換えるものです。ケーブルという特性上、運搬・施工が容易なため、特に施工費を抑えられます。壁面補強の場合には一般的なブレースよりも材料費は高くなりますが、施工費を含めた全体を考えると、コストを削減できます。

工期を半分以下に短縮可能

耐震ケーブルブレースでは、一般的なブレースを用いる工事と比べて、条件によっては工期を半分以下に短縮可能です。

耐震ケーブルブレースは軽量・柔軟であるため重機が不要で、人力による運搬・緊張作業が可能なことや、施工に障害となる建物の一部を避けた施工ができます。また、一般的なブレース材に比べて長尺で配置できることによる定着金具数の削減や、中間部の繋ぎ作業が不要となることで足場量を削減できることも工期短縮につながります。

居ながら施工が可能

一般的なブレースを用いた工事に比べて足場量が少なくて済むため、工事によっては居ながら施工が可能となります。また軽量であることから工事対象によっては足場を組むこともせず、高所作業車を用いて屋根に耐震補強工事を行うこともできます。従って、工場の生産活動の停止を最小限に抑えられます。

耐震ケーブルブレース採用事例

以下に耐震ケーブルブレースの採用事例を紹介します。

1.屋外階段|施工期間2日の短期対応

千葉県の小学校の屋外階段で採用された事例です。施工期間は2日間と、短納期を実現しました。

物件概要 都道府県 千葉県
施工期間 定着金具:1日、ケーブル:1日
ケーブル仕様 7本より15.2 mm
長さ、本数 約2m/4本、約9m/6本

2. 工場|狭小空間での施工

石川県の工場において、既設のトラス梁が込み入った狭小空間にケーブルブレースを施工しました。定着金具はボルトで接合しています。

接合方法として、火を使わないボルト式のほか、現場での溶接も可能です。

物件概要 都道府県 石川県
屋根面積 7,728m2
施工期間 休日・祝祭日で2年間
ケーブル仕様 19本より19.3 mm
長さ、本数 約24m、112本(ツイン配置)

赤色:CB 緑色:既存ブレース

3. 物流倉庫|足場無しでの作業

岡山県の物流倉庫において、足場を組まず、高所作業車で施工した事例です。
フォークリフトで複数本をまとめて間配りすることで、作業効率を大幅に改善しています。

物件概要 都道府県 岡山県
屋根面積 約24,000m2
施工期間 1年間(8工区に分割)
ケーブル仕様 19本より28.6 mm
長さ、本数 約15m、338 本

4. 事務所|大型重機無しでの作業

大型重機を使わずに施工した事例です。
足場面積や開口部を最小限に抑え、天井内部の干渉物も避けて施工しています。

特長 大型重機を使わずに搬入実施
足場面積、開口部も少なく作業
天井裏の干渉物を避けて配線を実施

導入を検討されている設計者様へ

鉄骨設計は建物の骨格だけに失敗が許されないので、新工法は設計・施工に不安な点もあるかと思います。耐震ケーブルブレースは販売開始から10年以上が経過し、導入実績は200件以上と年々増加しております。初めて施工される時は、納入時または取付時など、ご希望の日時に弊社より指導員を派遣して、取り扱い説明をいたします。

設計上のご不明点は、ぜひお問い合せフォームからお聞かせください。関連資料をダウンロードできますので、検討のお役に立てたらと思います。

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弊社では信頼できる施工会社様をご紹介しておりますので、お気軽にお問い合わせください。尚、お付き合いのある施工会社様での施工も可能です。

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軽くて柔軟、一般的なブレースよりも強い
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