吊構造物に使用されているケーブルは、常に引張力を受けており、腐食や損傷を放置しておくと重大な事故となる恐れがあります。
当社では、吊橋、斜張橋、アーチ(ニールセン)橋などの橋梁構造物および吊屋根構造、張弦梁構造、膜構造などの建築構造物に使用されているケーブルの腐食・損傷などについて点検・調査を行っております。
○ケーブルおよび付帯金物の目視点検
○ケーブル渦流探傷システム(非破壊調査)
○ケーブル被覆開封点検
○アンチメック®工法(構造ケーブル用防食テープ巻工法)
○ケーブル被覆損傷部の補修、開封点検後の被覆撤去部の補修
○レプリカ法による断面状況調査
○撤去したケーブルの各種調査(腐食状況、残留強度、断面状況)
○ケーブル張力調査
○取替用ケーブルおよび付帯金物の設計、製作
点検位置 | 点検項目 |
---|---|
橋の形状 | 橋面の傾き、異常な振動、湿潤環境 |
ケーブル | ロープ径、腐食、断線、摩耗、軸折れ、弛み、取付方法 |
定着部 | ソケット抜出し、腐食、泥等の堆積、変形、弛み、湿潤環境 |
吊 索 | ロープ径、腐食、弛み、ワイヤグリップの弛み、ケーブルバンドの滑り |
床板・手摺 | 損傷脱落、腐食、弛み(釘抜け) |
その他 | ボルト類の脱落、ネジ部の腐食 |
腐食が進行すると強度が低下し、素線断線やロープ自体および接続金具が破断する恐れがあります。
腐食したケーブルは取り替えが最も望ましいですが、腐食が軽度で取替が困難な場合は、ケーブルの延命策を図るケースが多数あります。しかしながら、適切な防食方法が取られていない場合、腐食が進行し続ける場合がありますので注意が必要です。
○
吊構造用ケーブルは、供用中常に振動や伸縮を繰り返しています。
○防食対策が適切で無い場合、防食材の割れ、剥離等の不具合が発生します。
○腐食したケーブルへの防錆塗装を行う場合、素線間溝部への充分な素地調整を行うことは困難であり、安定した防食性能は期待できません。
○プラスチックカバリングが損傷した場合、損傷部より水分が浸入し被覆内部が湿潤状態となり、急速に腐食が進行します。
○ケーブル被覆内部や定着部など目視確認ができない場合は、特に注意が必要です。
不適切な対策をした場合、腐食が進行し非常に危険な状態となる可能性があります。
構造用ケーブルには溶融亜鉛めっきが施されていますが、一般的に使用されている溶融亜鉛めっきの耐用年数は、 個別の環境に大きく影響を受け、数年のうちに耐用年数を終える場合もあります。
環境 | 腐食損失 | 発錆までの年数 | ||
---|---|---|---|---|
Zn重量
(g/m²/年) |
厚み
(μ/年) |
計算年
(年) |
観察値
(年) |
|
工業地帯 | 119.0 | 16.6 | 2.1 | 2.3 |
海洋地帯 | 35.1 | 4.9 | 7.1 | 6.3 |
田園地帯 | 19.2 | 2.7 | 12.9 | 12.1 |
めっき線の亜鉛付着量は平均247g/m²です。
(出典 日本鉛亜鉛需要研究会:亜鉛とその耐食性、昭和49年10月)
外観 | ||||
---|---|---|---|---|
経年変化 | めっき減量白錆 | 赤錆点在 | 赤錆1/2程度 | 全面赤錆→断面欠損 |
腐食レベル | A | B | C | D |
健全性 | 健全域 | 補修・取換検討域 | 取換検討域 | |
点検方法 | 目 視 | 目視 ロープ径測定 錆レベル ・ 錆分布調査
経過観察(錆進行速度の推定) その他 |
||
対 策 | 清 掃 | 補 修 | 取 替 | |
取 替 |
腐食レベルA:亜鉛めっき層の腐食減量のみ B:赤錆点在 C:赤錆が半分程度 D:全面赤錆(めっき完全消滅)
表2は溶融亜鉛めっき鋼線の腐食減面率がケーブルの物性に与える影響を示します。これによると断面の減面率が僅かであっても、引張強度や疲労強度が大きく低下します。更に、伸びやねじり等の靭性(粘り強さ)も大きく低下しているものと考えます。
また、
ケーブルは構成素線全数が同時に破断するのではなく、最弱の素線から順次破断するため、素線の残留集合強度の単純な合計がロープの残留強度ではなく、破断にいたる場合は連鎖的かつ一気に起こると考えられます。
したがって、強風や振動により破断する可能性が否定できません。